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インターライ方式とは

インターライ方式とは

インターライ(InterRAI)方式とは、介護や支援を必要とする高齢者のアセスメント手法の一つです。インターライ方式のアセスメント表とケア指針に基づいて、検討すべき課題とその要因を整理し、解決を導く根拠のあるケアプラン作成へ結び付けます。
もともと、アメリカのナーシングホームにおけるケアの改革を目的として1987年に開発が着手され、1991年に第1版が発表されました。
その後、各国で研究が進められ、1994年には国際的な研究組織「NPOインターライ(inter RAI 、アメリカ、ワシントン)」が設立されました。
国際的にはアセスメント表とケア指針を合わせてRAI(Resident Assessment Instruments)と令名されており、インターライ(InterRAI)とは、インターナショナルとRAIを合わせた造語です。

日本では、当初、アセスメント表を指す「MDS(Minimum Data Setの頭文字)方式」と呼称していましたが、2011年の改訂を機にインターライ方式と改称しました。

 

(1)RAI開発の経緯

アメリカでは、1950年代からナーシングホームを巡って抑制や虐待などが社会問題としてクローズアップされ、たびたび米議会でも取り上げられていました。1987年、連邦政府はナーシングホーム改革のため、職員訓練の義務付けや配置基準の引き上げを行うとともに、入所者の状態を包括的にアセスメントし、ケア計画を策定することを義務付けるなどの一連の方策を決定しました。
こうした決定を受けて、MDSアセスメント表の開発が着手されることになり、医療や社会福祉における専門家たちの観察の視点を共通化する必要が生じました。そこで、専門家のパネルにより、現場とのフィードバックで開発への取り組みが進むことになります。
MDSはADLや認知、転倒、褥瘡など、入所者の全般的な状態を把握する上で最低限必要であるとされる15の分野(AからOまで)のアセスメント項目から成り立っています。専門家として必要と思う項目について、現場での試行を繰り返し、アセスメントの項目を絞りこむとともに、評価方法の統一を図っていきました。
開発期限が近づいた中、開発者の一人であるJ.N.Morris(以下、モリス)先生(HRCA(Hebrew Rehabilitation Center for Aged) Research & Training Institute)は、アセスメント項目だけではプラン作成には不十分であることに気が付き、試みとして3つのRAPs(ラップス;Resident Assessment Protocols)を作成したところ、政府の担当者に評価され、すぐに必要な残りのRAPを作成するようにとの指示を受けることになります。モリス先生とスタッフは不眠不休で仕事をし、3ヵ月という短時間に18のRAPを完成させたと言います。MDSとRAPは、2つ合わせて使用することでアセスメントからプランを作成するツールであり、RAI(Resident Assessment Instruments)と呼ばれています。日本ではMDSアセスメント表の紹介が先行したため、当初からMDS方式と呼ばれ、2011年まで通称されてきました。
RAIは1991年以降、アメリカのすべてのナーシングホームで義務付けられ、寝たきりの入所者における褥瘡の割合など、施設における質を評価するQI(Quality Indicators)を計算するうえでも利用されています。

(2)各国での研究と国際組織インターライの設立

RAI(日本におけるMDS)のアセスメント手法は、世界各国の高齢者ケアの研究者の注目するところとなり、日本を含め15カ国で翻訳されることになります。デンマークでは、高齢者ケアの質が高いという実績を有していましたが、それを客観的に証明する手法がありませんでした。RAIを導入することにより、世界共通の「ものさし」をもつことができ、比較が可能になりました。一方、スウェーデン、イギリス、日本では、一部のアセスメント項目から算出される包括支払い方式であるRUG(Resident Utilization Group)の導入を目的に研究が始まりましたが、適切なアセスメントやケアプランがない中での包括支払い方式の導入には疑問が呈され、むしろケアプランの重要性に目が向けられました。
1994年、各国のケアの質の客観的比較を可能とするRAIの普及・開発を目的として、世界の研究者が集まり、国際的な研究組織「NPOインターライ(本部:アメリカ)」が設立されました。フェローと呼ばれるメンバーは推薦と選考によって選ばれ、研究・開発に関わることになりました。現在、日本では池上直己慶應義塾大学医学部教授(NPOインターライ日本 理事長、インターライ・ケア研究会顧問)と山内慶太同教授(インターライ・ケア研究会副会長)がインターライのフェローとなっています。

(3)日本における展開とMDS-HCの開発

RAIの成果を受け、1996年からインターライにおいて在宅版のアセスメント手法であるRAI-HC(日本におけるMDS-HC、HC=Home Care)の開発が始まりました。開発にあたっては各国のパイロットスタディの結果と現場のやり取りが2年間繰り返され、日本も20地区以上の現場からデータを提供しました。開発に使用されたデータの約4割を日本のデータが占め、書籍が最初に刊行されたのも日本です(1997年)。
MDS-HCには、RAPsに相当するCAPs (Client Assessment Protocol)がありますが、MDS-HCとMDSとは異なり、最初に在宅に必要なCAPsの領域が決まり、それに合わせてアセスメント表が開発されました。
1999年、MDS-HCは施設版との共通項目の整理・トリガーの精査等を経て改訂されたMDS-HC2.0版が翻訳されました。これは、介護保険制度の導入に合わせ、個々の心身状態に応じた切れ目のない医療・介護体制を構築するアセスメント及びマネジメント技術の提供を目的とした改訂でした。
日本では、施設版としてMDS2.1/ RAPs、居宅版としてMDS-HC2.0/CAPsが翻訳されて現場で利用されてきたほか、日本オリジナルとして、介護予防・要支援者を主な対象とする予防版MDS-HCも製作されました。
なお、日本において活用されたMDS方式は上記の3種類ですが、このほかにも精神障害をもつ方のためのMDS-MH、急性期の一般病棟の虚弱高齢者のためのMDS-AC、終末期のアセスメント表としてのMDS-PCがあります。このうち、MDS-MHはカナダの大部分の州において義務化されています。

(4)インターライ アセスメント システムの開発

2001年、インターライは、それまで開発した各種のアセスメント手法が共通の項目と定義を含むよう大規模な改訂に着手し、2009年にほぼ作業を終了しました。新システムは居宅、施設のほか高齢者共同住宅、亜急性期ケア、精神障害施設などのアセスメントシステムを統合的に活用しやすくするもので、共通のアセスメント項目の設定により、シームレスなケアを確実に提供する情報基盤となっています。
インターライが行った新システムへの再構築方法のポイントは、以下の3点です。

  1. ①居宅、施設などのさまざまな居住の場で共通に用いるべきコア項目から出発し、そこへ各版において追加的に必要となるアセスメント項目をモジュール式に加えていますので、概念的にも実際的にも更なる共通化が図られています。
  2. ②これまで施設と在宅で分かれていたRAP、CAPの指針を、新CAP(Clinical Assessment Protocol、ケア指針)に一本化することによって、切れ目のないケアプランを作成するうえで、課題の検討をいっそう行いやすくしています。
  3. ③高齢者住宅用のアセスメント方式を整備し、居宅・施設の中間に位置づけるとともに、同住宅に固有の項目としてインターネット利用等の活動、生活への満足を加えています。

(5)日本におけるインターライ方式

インターライの新アセスメントシステムは、オリジナルの英語版や各国で翻訳されたマニュアルは、いずれも各版別冊で刊行され、CAPも独立した1冊の本となっています。
これに対し、日本では、地域包括ケアのニーズに応えるため、インターライ本部の許可を得て、「居宅版」「施設版」「高齢者住宅版」の3つとCAPを1冊に盛り込んだマニュアル「インターライ方式 ケア アセスメント」を作成し、2011年11月に初版を発行しました。利用者がどこに居住しても共通のアセスメントを実施することができ、地域包括ケアの実現を支援するものとなっています。
「インターライ方式 ケア アセスメント」の特徴を以下にご紹介します。

  1. ①アセスメント表
    オリジナル版では、アセスメント表の項目記号はセクションも含めて各版によって異なっていますが、日本版では居宅・施設・高齢者住宅を統合する際に、すべてのアセスメント項目の記号番号を統一しました。第2章に各版に分かれたアセスメント表、巻末に統合版のアセスメント表が掲載されていますので、各版に追加されているアセスメント項目を把握しやすくなっています。ただし、各版のアセスメント表の記号番号は必ずしも連番となっておらず、また日本版専用であるため、オリジナル版とも異なる点に留意する必要があります。
  2. ②記入要綱
    日本版では居宅・施設・高齢者住宅を統合したため、記入要綱も可能な限り共通化し、高齢者住宅版を共通コア項目としたうえで、各版に固有の解説箇所について、居宅版は青色、施設版は緑色で記載しています。なお、コンピューターソフトにおいては、それぞれの版の該当箇所のみが表示されるようになっています。
  3. ③CAPトリガー
    MDS方式に比べてCAPの精密化が進み、トリガーされるCAPの数は大きく減りましたが、トリガーする仕組み(アルゴリズム)は複雑化しました。このため、CAPのトリガーはコンピューターソフトの利用を前提とし、MDS方式のような「CAP選定表」は用意されていません。
    同じ理由から、オリジナルのCAPにはトリガーの基準は示されているものの、対応する具体的なアセスメント項目は省略されています。しかし、ケアプランの課題検討を行う際などにCAPにつながったアセスメント項目を具体的に確認したい場合があることに配慮し、日本版ではこれらを本文中に提示しています。
  4. ④尺度(スケール)
    インターライ方式には、アセスメント項目を用いて測定が可能な尺度が含まれており、CAPトリガーにも採用されています。それらは、うつ評価尺度・認知機能尺度・日常生活自立段階の3つの尺度であり、章末にその算出方法を示しています。
    これらは、CAPトリガーとしての活用以外に、各事業所の利用者全体における認知症の各レベルの分布や、要介護度よりも精緻な身体的自立度の分布を明らかにするツールとして活用できます。自らの事業所の利用者の構成(プロフィール)を認識するきっかけとなることが期待できます。

(6)インターライ方式の構造とケアプラン

1)インターライ方式が目指すケアプラン
  1. ①利用者一人ひとりのケアの目標を明確にし、自立の姿(改善のほか悪化予防等を含む)を提示するとともに、支援の方向や予防策の必要性に対する理解を得るものとします。
  2. ②介護支援専門員がケアの判断基準や根拠をもって提示し、マネジメントの基本となるものとします。
  3. ③職種を越えた共通言語によって、多種多様なスタッフが共通理解のもとでケアを進めるためのものとします。※ 利用者も含めたチームで検討することが必要です。
2)アセスメント表とCAPの関係
  • 「アセスメント表」は、利用者に問題があるかどうか、どのような問題状況かを把握するために最低限必要とされるアセスメント項目からなっています。
  • CAPは、アセスメントでとらえられた問題状況の背景や要因、悪化の危険性、改善の可能性を検討するための視点とケアのヒントを整理しています。
  • アセスメント項目からCAPを導くしくみが「トリガー」です。
  • インターライ方式はトリガーとCAPが用意されているところに特徴があります。
表 アセスメント表とCAPの意味
インターライアセスメント表 CAP (Clinical Assessment Protocol、ケア指針)

○高齢者(サービス利用者)の介護計画(ケアプラン)を作成するために最低限必要なアセスメント項目を網羅

○高齢者(サービス利用者)の状態像(病状や生活状況など)を事実としてとらえ、まとめたものである

○高齢者の包括的なアセスメントであると同時に、特定の問題や機能低下の危険性を示唆する「トリガー」(ひきがね、誘導項目)を含んでいる

(Comprehensive Geriatric Assessment)

○現場の経験から、要介護高齢者に起こりやすい問題であって、かつケアによって対応が可能なものとして設定されている「領域」

○各領域の専門家が集まって、問題の所在や原因、危険性、可能性を探るための一般的な指針、さらにはケアの方向に関するヒントをまとめたもの

○アセスメント表でとらえられた問題や機能低下の危険性や改善の可能性を、さらに詳細に検討するように設計されている

表 CAP(ケア指針)一覧

<A. 機能面>
1. 身体活動の推進
2. IADL 3. ADL
4. 住環境の改善
5. 施設入所のリスク
6. 身体抑制

<B. 精神面>
7. 認知低下
8. せん妄
9. コミュニケーション
10.気分
11.行動
12.虐待

<C. 社会面>
13.アクティビティ
14.インフォーマルな支援
15.社会関係

<D. 臨床面 >
16.転倒
17.痛み
18.褥瘡
19.心肺機能
20.低栄養
21.脱水
22.胃ろう
23.検診・予防接種
24.適切な薬剤使用
25.喫煙と飲酒
26.尿失禁
27.便通

表 アセスメント表の構成

A 基本情報

B 相談受付表

C 認知

D コミュニケーションと視覚

E 気分と行動

F 心理社会面

G 機能状態

H 失禁

I 疾患

J 健康状態

K 口腔および栄養状態

L 皮膚の状態

M アクティビティ

N 薬剤

O 治療とケアプログラム

P 意思決定権と事前指示

Q 支援状況

R 退院・退所の可能性

S 環境評価

T 今後の見通しと全体状況

U 利用の終了

V アセスメント情報

表 版ごとのCAP一覧
CAP 居宅ケア
(インターライHC)
介護施設
(インターライLTCF)
高齢者住宅
(インターライAL)

機能面

     

1. 身体活動の推進

2. IADL

 

3. ADL

4. 住環境の改善

   

5. 施設入所のリスク

 

6. 身体抑制

精神面

     

7. 認知低下

8. せん妄

 

9. コミュニケーション

10.気分

11.行動

12.虐待

   

社会面

     

13.アクティビティ

   

14.インフォーマルな支援

15.社会関係

   

臨床面

     

16.転倒

17.痛み

18.褥瘡

19.心肺機能

20.低栄養

21.脱水

 

22.胃ろう

 

23.検診・予防接種

24.適切な薬剤使用

 

25.喫煙と飲酒

 

26.尿失禁

 

27.便通

26 22 15

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